仙台でのアジア計算材料学コンソーシアムACCMSの立ち上げ 

 東北大学の国際化を目指し、20世紀最後の年に企画が開始され、2000年8月20日から21日に仙台国際センターを中心として「21世紀の研究と教育に関する国際シンポジウム:大学間の学術交流及び学生交流の役割」(ISRE2000)が開催された。その一部として、多くの研究分野を網羅した「大学間国際交流フォーラム」が開かれ、グローバルネットワークの構築、地域交流・国際共同研究の促進、研究・教育の場における問題点及び可能性等に関し熱心な議論が行われ、ISRE2000の討議内容の実現を目指した東北大学宣言が公布された。本ACCMSは、ISRE2000の前段として1999年に企画・開始された「電子・原子レベルでの理論材料設計研究会」の拡大版としてスタートした。本番の一年前から準備していたこともあり、ISRE2000において、日本人主体で外国人研究者が数名だけという他のグループとは全く異なり、外国人研究者15名と日本人研究者15名を集めた真の国際会議として成功裏に開催にこぎ付けた。その詳細に関しては、東北大学の公式ホームページhttp://www.bureau.tohoku.ac.jp/kokusai/exchangej/othersj/index-h1-2.htmlをご覧いただきたい。 そこで、創始者としての川添を含む3名(B. L. Gu前清華大学学長、G. P. Das現カルカッタ大学教授)が役員会として将来像を策定することとなった。また、諮問委員会としては、M. Doyama (日本)、R. B. Tao (中国)、S. Ranganathan (インド)、J. Ihm (韓国)、V. R. Belosludov (ロシア) 、K. Esfarjani (イラン)、T. K. Lee (台湾)、N. Manh (ベトナム) 、R. Chitradorn (タイ)からなる国際チームを編成した。この9ヶ国にシンガポールと香港を加えた11ヶ国をメンバー国とし、参加を希望するオーストラリア、米国等も準メンバー国とした。もちろん、準メンバー国選定ではアジア出身者が活躍していることが重要な要素であった。図1に、東北中心地図上に描いたACCMSがカバーする領域を示す。この時、台湾をどうするかという問題が発生し、単位は国ではなく、常に国/地域(country/region)という呼び方、数え方をすることになった。こうしないと中華圏が一緒に参加できないのである。国際関係の難しさを肌身で感じ、大変に勉強になった。実質的な立ち上げ作業は、V. Kumar客員教授が行い、ホームページの整備等には本所職員が当たった。また、第1回ACCMSを、2001年にインド国バンガロール市のインド科学研究院(IIS=Indian Institute of Science)で開催することを決定した。   ACCMSに関する詳細情報は、ホームページhttp://accms.mobility.niche.tohoku.ac.jp/ をご覧いただきたい。設立の目的から始まり、これまでの活動が多くの写真と共にまとめられていて、その全貌が分かる。ACCMSのホームページは、本センターが運用するimr.eduドメインにある。eduドメインは、米国のみが使っている教育機関用ドメインであるが、特に本センターが使えたのには訳がある。筆者の一人(川添)が、インターネット以前のbitnetの時代に、東北大学情報処理教育センターのシステムを国立大学として最初にbitnetに参加させようとした時に始まるので長い歴史の産物である。当時はノード名がアルファベット8文字までに限られていた。STANFORD、YALE、MITと皆、大学名か良く知られたその省略形を使っていたので、TOHOKUと登録しようとすると、3文字の国名が必要だ、日本はJPNである、との指示があり、驚愕した。「何故米国だけ国名が不要なのか?JPNを付けたのではJPNTOHOKと半端になってしまう。」というと、JPNTOHOKで受け付ける、と全くこっちの言い分を無視した回答が帰って来て二度びっくりしたことを鮮明に覚えている。イギリスの切手に国名がないことは有名であり、電話は米国が1番を使っている。インターネットも英語ではInternetと大文字で始まる米軍プロトコルTCP/IPをベースとした固有名詞であり、世界は平等ではなく、その時の強国が世界を取り仕切ることを思い知らされた。ことある度に、「世界の金研」と呼ばれているのだから、ac.jp等という低レベルではなく、eduドメインが欲しいと言い続けて来たところ、たまたま天皇陛下とお目にかかる機会を得た。それを米国のネットワーク管理者に伝えると、imr.eduを使って良いとの連絡があり、本当に大喜びし、早速、使い始めることになった。ACCMSのメンバーは、この米国とのドメイン名争いの歴史を良く知っていて、我が国、及び本センターの活動を高く評価することの一因になっている。ドメイン名は重要なことをしみじみ感じている。しかし、残念ながら、eduドメインは現在、米国が占有宣言をしていて、ACCMS内で広めるということは出来ない。国内企業や大学は、現状のco.jpやac.jpに甘んぜず、この様な問題をしっかり認識し、世界と対等に仕事を行う基盤を持たなければならない。(現在、ACCMSのホームページは川添の定年と異動に従い、imr.eduドメインからmobility.niche.tohoku.ac.jpに移動して運用している。) バンガロールでの第1回大会には予想を超え、13ヶ国から85名の参加があり、39名の招待講演者を設定したが、さらに52件の最新の研究成果発表申し込みがあった。参加者全員が1室で全ての講演を聴講できるという会の趣旨を重要視することを決定し、時間不足はポスター発表で解消する形式を採用した。川添の友人の会社社長からの寄附を使い、若い研究者にポスター賞を出すことも決めた。これは大変好評であり、ACCMSでポスター賞をもらったことを励みに材料設計シミュレーション研究に邁進し、高度な成果を挙げ続けて、既に欧米で高い地位を獲得した研究者も出ている。副賞として賞金の他に我々の著書も提供しているが、それを読み込んで嬉しいコメントをくれる受賞者がいることは逆に我々の励みとなっている。 世界的に見ても同様の国際会議は欧米を中心に行われているPsi-kのみであるが、そこでは5年ごとに500名規模の大会を開催しており、その中には多くのアジア人研究者が含まれている。アジア地区の研究者規模から200名程度を想定し、研究の進展状況からACCMSの主国際会議は隔年開催が良いという結論となった。また、会議の成果を国際的に公表するため、国際的な出版物を刊行することになり、第一回目はドイツ国シュプリンガー社から、ACCMS国際会議プロシーディングとして出版した。これは以降の全ての会議において継続されており、ACCMSの知名度アップに大いに役立っている。


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